元内閣官房参与「ミスターアベノミクス」本田悦朗が円安経済と金融緩和政策について語りました。
▶日経テレ東大学『あつまれ金融の森』ミスター円・ミスターアベノミクスが激白!!為替とアベノミクスのゆくえ
金融緩和政策が円安を招いている?
本田悦朗氏
「その考えは正しくない。
為替レートを金融政策を持って影響を与えるということが間違っている。
変動相場制をとる以上、国際金融における資本の自由移動、国内経済の安定、為替の安定というトリレンマを常に念頭に置いておかなければいけない。
3つを同時に満たすことはできないというのが大原則。
為替はマーケットに任せるというのが大原則。
金融政策は国内の経済を安定させるため。
今で言えばデフレからの完全な脱却と長期停滞ですよね。
円安が進むからちょっと金利をあげようとか、そんなことは国際的に認められないし黒田総裁がやるとも思えない。」
榊原英資氏
「黒田さんは金融緩和を続けるでしょうね。
でも任期がある。
だからポスト黒田の総裁がね、日本経済が加熱化してね、それで若干インフレ懸念が出てくる、そういう局面になったときに利上げをする可能性は出てくるでわけですね。
だから今の金融緩和は黒田さんの時期は続くでしょうけど、それが来年〜再来年、逆転する可能性が出てくるわけですね。」
黒田緩和を振り返る
2%インフレを、当初は2年程度を目標に目指して来た。
黒田総裁就任直後は1%を超えることもあったがそれ以降は0〜1%で推移。
今は2%に迫っているがエネルギー要因で狙ったものではない。
ずっと狙っていた2%には一度も届いていないということになるが当初目標とのズレの原因と評価は?
本田悦朗氏
「2%の物価安定目標を達成できなかった理由はいろいろあるが、最大の原因は消費税増税です。
これがアベノミクスの全体の枠組みをぶち壊したんです。
残念です。本当に。
2014年4月に5%から8%に一気に3%上げてしまった。
しかもアベノミクスを始めてまだ1年ちょっとなんですよね。
直前にはコアで1.5%まで上がって、みんなちょっと慢心してしまった。
そしてその一番良いときに消費税増税があった。
逆に言えば1.5%という数字も消費税増税前の駆け込み需要もあったかもしれないので上げ底の数字かも知れないが、いずれにせよ傾向としてはインフレ率も消費もぐっと上がったんです。
これだったら行けるかも知れないと思ってやった消費増税。
1回で3%上げた例はヨーロッパでもまず無いんです。
だから誰が見ても危ないと。
だけど第二次安倍政権が出来る直前に3党合意に基づいて消費税増税法が成立してしまった。
これ安倍さんは悩みました。
私もそばにいてひしひしと伝わってきた。
これやったら危ないよなと。
アクセルとブレーキ同時に踏んだら車はどうなるのかねと。
それで私は最初は延期を進めたんですけど政治的に無理だなと。
じゃあ刻み方を変えましょうと。
毎年1%ずつ5年間に渡ってゆっくり上げていけば、消費者はそれほど痛みを感じないはず。
むしろ予想インフレ率が上がっていくのに役立つかも知れないと。
安倍総理も理論的には良いが、消費税増税法が出来て8%にあげると言っているときに1つずつあげるのは難しいと。
一言で言えば、安倍さんにはまだポリティカルキャピタルが、つまり抵抗を排除して自分の政策を実現するだけの政治力がその時はまだ無かった。
本当に辛そうでした。
その後10%への増税は2回も延期した。
金融だけでは難しいと説得して回った。
最終的に2019年に2回目の増税をしたが、このときは組み換えをやったんですね。
高齢者中心の社会保障ではなく、幼児教育それから子育て支援にまで社会保障の枠を広げようということで国民の支持を得て2019年10月に10%に上げました。
その時には軽減税率も入れたんですね。
これで納得してくれると思ったが、相当な反発もありました。
且つその直後に消費が落ちてGDPも落ちました。
その翌年2020年からはコロナも来て要因がわかりにくくなったんですね。
何が原因でマイナス成長になったのか。
今から考えると、いろんなことをやってきたが、2回に渡る消費増税が国民のマインドに対して水をかけてしまったのが大きいと。」
野党各党が消費税減税を掲げるも自民党大勝で増税へ突き進む
アベノミクスの中心でタクトを振るったミスターアベノミクス、本田悦郎氏本人が『消費税増税がアベノミクスをぶち壊した』と公然と語るほど、今の日本におけるデフレと長期低迷の要因ははっきりしています。
そして2021年衆院選、2022年参院選では与党各党が『消費税減税』を公約に掲げて闘いましたが、それでも自民党が勝利して終わったという結果は、もはや国民が増税路線に賛成し後押ししたという結果にほかなりません。
物価だけが上がり、所得は増えず、先進国の中でも最低の成長率を叩き出し続けるオワコン日本にあって、国民はこのままゆっくりと死んでいく現状維持を選択したのです。
この選挙結果は岸田政権を強く信任したことになり、今後岸田総理はさらなる増税に突き進むのではないかといった観測も専門家の間で囁かれています。
まずは手始めに、2023年4月、黒田日銀総裁の任期満了後の後継に金融引き締め政策を実行してくれる新総裁を任命するのではないかとも言われています。
ですが、円安の原因はむしろ異常なドル高であり、日本の金融緩和政策が原因ではないという見方が自然です。
そしてエネルギー、穀物の価格上昇に喘ぐなかで金融引き締めによって景気がさらに後退した場合、そこには賃金上昇どころか真逆の大恐慌が待っている可能性すらあるということを知っておかなければいけません。