ベーシックインカムはオワコン日本を救えるか 必要なのは「働く」価値観の刷新

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超少子高齢時代を迎えてすでに沈みかかっている日本に於いて、なぜ今ベーシックインカムの議論が盛り上がりを見せているのか。

▶ホリエモン「竹中平蔵さんが提唱するベーシックインカム制度について私の意見をお話します

▶竹中平蔵「ベーシックインカムを導入するのに財政をどうしたら実現できるのですか?

ここではいろいろなメディアで語られるベーシックインカムがもたらすであろう効果と、導入までのハードルについて考えていきます。
なお、具体的な試算ではなくあくまで概念的な考察であることをご留意ください。

ベーシックインカムとは

ベーシックインカムとは、超カンタンに直訳するなら「基本収入」とでも言いましょうか、要するに政府が国民に対して、最低限の生活を保証する目的で定期的に一定の金額を給付する仕組みのことを言います。

ベーシックインカム導入と同時に廃止されるもの

普通に考えてベーシックインカムが導入されたら以下のものは無くなると考えるのが自然です。

  • 年金
  • 生活保護

これらは一定の受給基準をもとに国民の最低限の生活を保証するというのが目的ですから、目的が重複するベーシックインカムが導入されたらおそらく廃止されることになります。

また、

  • 子ども手当

に関しては子育て世帯への支援目的で給付されるものですが、ベーシックインカムは子どもを含む全国民に給付されるものなので、これも不要になります。

例外として

  • 障害者への給付

については最低限の生活を送るために健常者よりも多くかかってしまう生活コストを保証するものなので、給付額の大小はわかりませんが残る制度だと思って良いでしょう。

なお、ここで取り上げていない保証や給付制度に関しては上記のような考え方で判断されるものとして各々補完して読み進めてください。

ベーシックインカム導入の大前提は価値観の刷新

ベーシックインカムの導入に関してハードルと思われる事柄はいろいろありますが、大前提として「従来の価値観を大きく変える必要がある」ということを覚えておいてください。

既存の価値観や既存の制度の上にポンと載せてもベーシックインカムはおそらく成立しません。

現状の延長線上では日本を蝕む病は何も改善しないという認識のもと、根本の価値観から大きく変えていく必要がある、という考え方が出発点になります。

ベーシックインカムで国民の労働意欲は削がれる?

ベーシックインカムの議論で反対派の方が懸念事項として挙げがちなのが「労働意欲の低下」でしょう。
そして、これに対して「変わらない」や「むしろ上がる」といったベーシックインカム肯定派の意見は、そんなに正しくないと思っています。

なぜなら、給付額の範囲で慎ましく生活できてしまう人も一定数以上必ずいて、その人たちの労働意欲は確実に低下するからです。

でも、それこそがベーシックインカムの『効果』なのです。

国民1人あたりのGDPをみるとわかりますが、日本人の生産性の低さは先進国で最低レベルで、その原因の一端は日本人に顕著な「努力至上主義」にあります。

「お金儲けよりも地道に頑張ることが大切」と幼少の頃から刷り込まれた古い価値観は、SNSの力を借りて「金儲けなんてけしからん」「楽して稼ぐな」という歪んだ正義感を振りかざし、今や日本全体が足の引っ張り合いをしています。

ですが、現実的に社会を支えているのは一部の富裕層が収める巨額の税金であり、ベーシックインカムが導入されれば給付額を支えているのは富裕層であるという直接的な恩恵を国民全体が受けることになります。

つまり、優秀な人はガンガン稼いで税金を払い、国民の生活を支え尊敬を集めるという関係性が成り立つわけです。

そして、優秀な人がどんどん稼ぐためには生産効率を上げなければいけない。
効率を上げるためには優秀な人がたくさん働き、無能な人は効率を下げるので働かないほうが良い。

言う成れば、格差を悪として全体を底辺に合わせる社会ではなく、格差を肯定して成功者に引っ張り上げてもらう社会です。

この「無能な人が働かなくても生きていける社会」こそがベーシックインカムを成立させるための価値観であり、ベーシックインカムがもたらす新しい社会ということだと思うのです。

機械化・自動化・AI化

一部の単純労働は人が行うよりも機械化してAIが管理するほうが効率が良い、ということは、今の時代であれば誰でも想像できるでしょう。
ですが、そこには単純労働を担う労働者たちと、労働者を守る組合があります。

二束三文の単純労働であっても働かなければ食べていけない。
その労働者の職を守るために機械化が進まない。
そんな産業や職場を目にしたこともあるでしょう。

でもベーシックインカムで最低限の収入が確保されていれば、言葉は悪いですが単純労働に従事する人の生活を気にすることなくバンバン切ることが出来ます。
そしてその結果、機械化が進み生産性が上がります。

わかりやすい例で言えば、2021年に政府主導で『手続き上のハンコ廃止』が進められました。
その時は「ハンコ屋が生活できなくなる」「ハンコ文化は守るべきものだ」といった反対意見が騒がれたものですが、1年経って誰も気にする人はいなくなりました。
むしろ役所手続きにハンコが要らなくなり、書類にハンコを押すためだけの無駄な出勤がなくなり、良いことづくめです。

もちろんハンコ文化は歴史ある素晴らしいものですが、社会の効率化という視点で言えば、もっともらしく弱いものの立場に立った風の歪んだ正義感が社会の進化を妨げていた、という好例です。

ベーシックインカムがもたらすかも知れない効果

このページでは、例として「日本政府が国民全員に毎月8万円を給付する」という前提で話を進めていきましょう。

ベーシックインカムで地方創生

仮に設けた「月額8万円」を前提に話を進めるならば、「給付額だけでは生活出来ない!」という声も挙がるでしょう。

しかしながら、それは今の生活水準を続けるという前提に立った場合の話です。

例えば、東京に住んでいれば8万円なんて家賃の足しにしかならないでしょう。
でも、そもそもいろいろな娯楽や行政手続きのオンライン化が進んだ今、本当に東京に住む必要があるでしょうか。

実際、家賃の安い地方に移住すれば同じ8万円でも悠々自適に暮らすことも出来ます。
その上でリモートなどの仕事で多少の収入を得ていれば、裕福とは言えないまでもそれなりに余裕のある生活を送ることができるはずです。

ベーシックインカムのこういった側面に気づいた自治体は、いち早く移住者を優遇する政策を打ち出すでしょう。
そして東京一極集中という社会問題すら解決するかもしれません。

自分のペースで働けるという精神的肉体的余裕

月額8万円が支給されていて、生活のためにはあと5万円ほど足りないという場合。
そんな場合は、月に5万円分だけ働きましょう。

もう週5日のフルタイムで働く必要なんてありません。
ワークシェアで週2日だけ働くとか、リモートで日に3時間だけ働くとか。

それだけで、現代人が抱える社会生活におけるストレスの大部分が消し飛びます。

体力的、時間的に余裕があるときにまとめて働いて、余分に稼いだお金で思い切ってバカンスを謳歌するのも良いでしょう。

月額収入が恒久的に約束されているわけですから、一説では2000万円は必要だと言われている老後の貯蓄についてもそこまで重く考える必要はなくなるでしょう。

そんな都合の良い働き口なんて無い!という嘆きも聞こえてきそうですが、ベーシックインカムの大前提である価値観の刷新が企業側でも起これば、そんな働き方が一般的になるかも知れません。

余裕が善意を生む

日々の生活で手一杯で時間的にも精神的にも余裕がない方はたくさんいると思います。
ですが、ベーシックインカムによって生活に余裕が生まれれば、その余裕を他のことに費やすような生き方も出来るでしょう。

趣味を謳歌してストレスを解消し、同時にその趣味が労働を超えた価値を生むかも知れません。

地域のボランティア活動に参加することで、自分の住む地域の方との交流を増やして日常生活が豊かになるかも知れません。

学校行事やクラブ活動に協力することで教員の負担を軽減し、安全で質の高い教育環境の醸成に貢献できるかも知れません。

このように、ベーシックインカムによって得た余裕が利益を度外視した善意の活動を生むことは想像に難しくありません。

また全国民に強制的に給付されるベーシックインカムは、周りの目を気にして生活保護を受けられないような潜在的な貧困を解消する効果もあります。

貧困が差別を生み犯罪を助長するような傾向があることは事実で、この貧困が少しでも減れば、貧困が原因で発生する犯罪も減らすことが出来るでしょう。

ベーシックインカムで少子化対策

結婚から出産に至るまでには数々のハードルがありますが、ベーシックインカムはそのハードルをいくらかでも下げる効果があるのではないかとも思います。

例えば、お金がないから結婚できない、お金がないから子どもは作れない、といった悩み。

ベーシックインカムで国民一人あたりの給付額は固定されていますが、生活コストは一人よりも二人、二人よりも三人と多人数で共同生活を送ったほうが安く済む傾向があります。
そして恒久的に定期的な収入が約束されているわけですから、貯金がないから…とか、結婚後に万が一職を失ったら…といった経済的な悩みは不必要なものになります。
さらに子どもが増えれば共同生活を送る人数が増えるわけですから、経済的にはもっと楽になるということに。

さらに産育休であっても収入は約束されているわけですから、結婚出産というライフステージを社会生活におけるハンディと捉えられる場面は限りなく少なくなるでしょう。

ベーシックインカムの財源なんてどこにもない!

本当にそうでしょうか。

富裕層に金を配る必要なんて無い!

これがもっともナンセンスな批判です。

一定の所得を超えたら累進課税制で納税してもらえば良い。
制度設計でなんとでもなります。

実はそれほど大きな支出増にはならない?

年金廃止、生活保護廃止、子ども手当廃止と先に述べた累進課税の所得税によるバックを相殺したら実質的な支出増はある程度の範囲に収まるのではないかと。

なお具体的な試算に基づいた意見ではありません。

社会保障制度の運営にかかるコストは大幅に減る

ベーシックインカムは受給資格もなければ審査もありません。
日本国籍を持った日本人であればすべての人に平等に給付され使途は完全に自由です。

ということは、年金保険料の徴収や催促、年金受給資格の管理、生活保護受給資格の審査などなど、各種社会保障を運営するためにかかるランニングコストがごっそり要らなくなるということでもあります。

2021年には「全国民に10万円配ります。ただし半分はクーポンで、クーポンを印刷、配布するために数百億円のコストがかかります。」という馬鹿げた政策が国民から総スカンを喰らったことを覚えていると思いますが、当然、社会保障を実現するために政府と国民の間に入っている怪しい団体の大半は不要になり、税金から中間マージンを搾取されることもなければ政治家が特定の団体へ便宜を図って天下りすることも無くなります。

さらに給付はマイナンバーカードに紐付けられた個人口座へ機械的に配ることが出来るので、申請も要らなければ給付までの待機時間のようなものも無くなります。

ベーシックインカムはまさにデジタル化が進んだこれからの時代だからこそ実現可能な政策であり、あらゆる無駄を省くことで税金を無駄なく効率よく活用することが出来る政策であると言えます。

なお、マイナンバーカードを「まだ要らない」「全然便利じゃない」という理由で発行していない方も多くいらっしゃいますが、そういう人たちがいるせいであらゆる行政手続きのデジタル化が進まない原因になっているということも認識しておきましょう。

医療保障だけは死守

ベーシックインカムを肯定する識者の意見を二分するのが「医療保障」の有無ですが、これについては絶対死守を推します。

もちろん制度の細部を見直すことは必要だとは思いますが、最低限の生活を保証するはずのベーシックインカムが日々の医療費で消えていくようなことは本末転倒。
病気や怪我は年齢に関係なく訪れる天災のようなものであり、これを支える医療補償制度は日本の数少ない優れた制度のひとつです。

その上でベーシックインカムによって手にするであろう生活上の余裕を「予防医療」に向けられれば、日本人の健康寿命を伸ばし医療費削減につなげることが出来るのでは。

もっとも困難なハードルは年金の廃止

ベーシックインカムを成り立たせるには、年金を廃止しなくてはなりません。
そしておそらくこれが最も困難なハードルです。

若年層はすでに年金が割に合わないことを知っていますが、年金を廃止すれば高齢者ほど現役世代から何十年も積み立てたという結果を破棄することになります。
そして日本は超高齢社会であり、3人に1人が65歳以上という恐ろしい時代にあります。
そのため一人一票の民主主義ではなかなか実現できそうにない、というのが最も危惧するハードルです。

▶日本の人口減少のヤバさ

年金を段階的に廃止していく上手い手段を識者の皆さんにひねり出していただくことは絶対として、同時に高齢者にはある程度の不合理を飲んでいただく必要があるのかも知れません。

何もしなくても滅ぶなら

日本の経済、そして国力の衰退は、思っている以上に危機的状況にあります。

この日本の状況を好転できるのならその手段は必ずしもベーシックインカムでなくても構いませんが、現状の政策の延長線上にはどうやら正解はなさそうということには大勢が気づき始めています。

そしてこのまま何もしなければ、数年後、数十年後にはもっとひどい状況に陥っていることは明らかです。

ジリ貧で滅んでいく日本を受け入れるか、理想を描いて大きく舵を切るか。

「国には興味がない」「自分だけは大丈夫」だと思って生きていけるのは一部の優秀な人だけで、大多数の生活環境は国の経済状況に依存しています。
「〇〇だから無理」がわかっているならそれを打破する方法も考えられるはず。
そろそろ真剣に国と向き合う時なのかも知れません。

▶成田悠輔「若者が選挙に行っても意味がない」


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