異次元の少子化対策の鍵は核家族化解消にある

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岸田内閣が異次元の少子化対策を謳い、過去に類を見ない対策を実現しようとしている。

児童手当増額案に対する賛成意見と反対意見

内閣の具体的な対策案に先んじて、児童手当の自民党案が様々な議論を呼んでいる。

第1子15,000円/月
第2子30,000円/月
第3子60,000円/月
自民党の児童手当増額案

あくまで自民党案の段階であり、財源の問題も含めてどこまで実現するかは今の所わからないという状況ではあるが、この案に対してはSNSや各種報道で以下のような反応が出ている。

賛成意見
・細かい数字は変わるだろうが、与党にしては初っ端から思い切った数字を出してきたという点で評価できる。
・岸田内閣の本気度が伺える。

反対意見
・一人目の壁(第1子をもうけることのハードル)に対して効果がない。
・お金のばらまき反対。人数に応じた減税のほうがマシ。
・お金目当てで子供を作るような人間はそもそも親になる資格がない。
・お金目当てのネグレクトが増える。
・財源のために現役世代の負担増になるなら逆効果。

ざっくり言えば、賛成意見は「政府与党の姿勢」を評価するものが多く、反対意見は「問題のすべてを解決できる策ではない」という内容が多い。

少子化の原因はひとつではない

自民党案への反対意見を見て思うのは、各々が感じている「少子化の原因」がさまざま存在するという点である。

一人目の壁

第1子をもうける夫婦が少ないことを少子化の原因とする場合だけでも、問題は
・婚姻数の減少
・晩婚化
・共働き世帯の増加
・産育休によるキャリアへのマイナス
・生き方の多様化
など枚挙に暇がない。

そしてこれらを解決するためには
・若者の可処分所得の増加による婚姻数増加
・産育休中の所得保護や手当
・産育休後のキャリア復帰プランの確保
などが挙げられるが、本質は子育ての枠を超えた社会全体の仕組みに起因するため一朝一夕で解決できるような問題ではない。

強いて言えば日本経済が再び勢いを取り戻すことと、定年制廃止や同一労働同一賃金によるキャリアの流動化などだろうか。
もちろんこれらも日本の課題として取り組まれてはいるが、「少子化対策」という名目で挙げるには国民の理解度が足りずに混乱を招く恐れがある。
さらに言えば生き方の多様化などは個人の価値観の問題であり対処すら不可能である。

多子世帯の困難

一人目の壁とは別の問題として、2人目以降の子をもうけるハードルが存在する。
・1人はまだしも2人目以降にかけるお金はない。
・1人以上に育児の手間がかかり現実的ではない。
という経済的な問題と時間的問題の2点が主なハードルであるように思う。

そして、児童手当増額の自民党案は主にこの多子世帯を支えるための少子化対策である。

事実、報道では育児というと産育休のような「お産前後の1〜2年の期間」だけに目が行きがちだが、実際には保育園に入れたあとの送り迎えや急な体調不良、小学校にあがってからの学童保育と帰宅時間の問題など、子供が自立するまでの10数年間に渡って親には時間的拘束が発生する。
さらに多子世帯ともなればこの負担が多重奏的に折り重なって負担も期間も増していくことになる。

これに対して児童手当増額の自民党案では「3子のいる家庭であれば月に10万5千円の手当」が支給されることになるのだが、この手当が意味するところは「夫婦のうちひとりは専業主婦(夫)」になっても経済的に困らないための手当、と捉えることが出来るだろう。

もちろん女性の社会進出を促さなければいけない時代に於いて政治家が「仕事を辞めても食っていける手当ですよ」とは口が避けても言えないわけだが、この案が実現すれば「2人目、3人目のために長期間仕事を離れよう」と決意する夫婦も増えるはずである。

なお、念の為付け加えるならば「お金目当てで子供を作る様な〜」や「お金目当てのネグレクトが〜」といった反対意見は「それっぽいことを言いたいだけ」の母数を無視したただの批判であり反論に値しない。

すべてを一度に解決することは出来ない

少子化の原因として言われる前述の2つの問題だけを見ても、
・1人目を作るかどうか
・2人目を作るかどうか
の判断基準は大きく違い、対策するにしても対象者や対策内容は当然違ってくる。
両者を一挙に解決できる妙案があればいいが、現実的には難しいだろう。

児童手当増額の自民党案は多子世帯に問題を絞った解決策であるという点を念頭に置いて議論されるべきである。
これに対し、改善効果が期待できるならば「不足」に対する指摘はあっても「否定」にはならないはずであるのだが、匿名で交わされるSNSの議論は往々にして対処すべき原因を絞らずにそれぞれが発言するものだから手厳しい。

バラマキと財源

〇〇手当=バラマキ政策だからダメ。というステレオタイプな反対意見も多いが、減税だろうが手当だろうが特定の国民に還元するという意味では大きくは変わらないのだから反対意見としては不十分である。

「選挙のための人気取りだ」という意見もあるだろうが、功績や期待値に対して評価を下すのが選挙だとするならば民主主義としては自然なアピールだとも言える。

「税金の無駄遣い」を指摘する意見については、マイナンバーカードが普及すれば手当を配る手間もコストも大きく下がり、政策実行に付随する税金の無駄遣いが抑制されるのだから、バラマキ政策によって中間マージンを得るコバンザメ業者が湧かないようにバラマキに反対する前にまずはマイナンバーカードの普及を訴えれば良いのではないかと思う。

財源は増税以外の方法で

手当の拡充のために増税で財源を確保することだけは筆者も反対である。
現役世代の働き手と子育て世代はほぼ同一世代であり、増税によって可処分所得が下がればこれから子を儲けようとする未婚、既婚の若い世代が苦しむことになる。

ただでさえ高齢者を支えるための大きなハンデを強制的に背負わされているのだから、さらに重税を課せられる謂れはない。

むしろ今こそ手厚く保護された高齢者から財源を剥がす絶好の機会である。
社会保障費のバランスを大きく変えて、これからの世代のために社会全体の構造を作り変えていただきたい。

核家族化がそもそもの少子化の原因なのでは

最後になってようやくのタイトル回収。

厚労省が調査した核家族世代の数を表したグラフがこちら。

▶厚労省「グラフで見る世帯の状況

これは少子化のグラフと連動しているように見えないだろうか。

昭和の3世代が同居していた時代、共働き夫婦自体が少なかったということもあるが、子供は親だけでなく祖父母の手を借りて育てるのが普通であった。
筆者の親は共働きで筆者自身は祖母に育てられたと記憶している。

実際、子供を祖父母に預けられるという安心感は大きく、保育園や学童保育に頼らずとも子供の面倒を見れる身内がいれば職場復帰は困難ではない。

ではどうすれば核家族化を解消できるか。
そのひとつの可能性としてベーシックインカムの実現が挙げられるのではないか。

ベーシックインカムによって例えば月額70,000円支給されたとする。
もちろんこの金額だけで生活するのは難しいと言う人は働けば良いのだが、極力ベーシックインカムだけで生計を立てようとするならば生活コストを下げることを考えるだろう。

この生活コストを下げるための有効な手段として、世帯人数を増やすという方法が挙げられる。
一人暮らしよりも多人数のほうが一人あたりの家賃住居費が少なく済む。
一人暮らしよりも多人数のほうが自炊費用が少なく済む。
これらの効果は想像に難しくないだろう。

であるならば、3世代で同居することで生活コストを下げながら子育てをし、時間的な余裕を見て職場復帰を果たすという生き方がもっともしっくりくるのではないかと。

いやむしろ、児童手当増額が実現すれば親の年金と子供の児童手当で「疑似ベーシックインカム生活」は実現可能なのではないか?
さっそく田舎の両親に相談してみようと思わざるを得ない。


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