▶Re:Hack「ハーバード出て完敗…女性が選挙に勝つには?」より
“私達”の延長線にはいないから共感できない
元三菱商事で自民党候補として2021年衆院選に出馬し落選された向山淳候補がなぜ有権者の共感を得られなかったのか、についての発言。
ひろゆき氏
「(政治家への転身を目指すことは)ハーバード大学まで行って三菱商事に行って年収1000万超えを捨てるっていうかなりのリスクを負ってるわけじゃないですか。
ただそこまで想いが強いというのとは別に、コイツには俺達の気持ちはわからんよねって(有権者に)思わせてしまうものがあったんだと思うんですよ。
キャリアだけバリバリ積んでるわけでもなくてちゃんとお子さんも育ててますみたいな、ビジネスもやって家庭も育んでお前いいとこ取りしまくりじゃんみたいな。
でさらに政治家かよってので、やっぱりその共感よりも羨ましいとかのほうが強くなっちゃうんだろうなっていう気がしてて。」
中略
ひろゆき氏
「日本の女性の半分は高卒以下じゃないですか。
さらに主婦って働いてない人も多くいるので、そうするとどちらかというとマジョリティの人からすると、羨ましいし私達のことはわからんよねって思われてしまう。
でその人たちが女性の代表っていう顔を押し出されても、女性の代表かも知れないけど私達の代表じゃないよねっていう、そういう感じになっちゃうのかなと思って。
ヒラリー候補が大統領になろうとしたときに、家事しないってことでめちゃくちゃバッシングされたじゃないですか。
家事しないような女が大統領を目指すなんていかがなものかみたいな。
いやいや大統領に家事の能力は関係ないでしょっていう合理性ではなくて、やっぱり私達の延長線にいないっていう捉え方をされてしまってるのかなと思ったんですよ。」
候補者中の女性比率と当選比率
直近の2022年参院選を例にすると男女比率は以下。
全候補者 | 女性候補者 | 女性比率 | |
選挙区 | 367人 | 122人 | 33.2% |
比例区 | 178人 | 59人 | 33.1% |
計 | 545人 | 181人 | 33.2% |
女性候補者の比率としては国政選挙では初めて30%を超えた。
なお当選者中の女性比率は以下。
全当選者 | 女性当選者 | 女性比率 | |
選挙区+比例 | 125人 | 35人 | 28% |
こちらも過去最高の女性比率となっている。
ただし、男女平等と言える50%にはまだまだ程遠い数字である。
なお、男女それぞれの当選比率は以下のようになる。
候補者数 | 当選者数 | 当選比率 | |
男性 | 364人 | 90人 | 24.7% |
女性 | 181人 | 35人 | 19.3% |
この数字を見る限りでは「男性候補者のほうが当選しやすい」と言える。
なぜ女性議員は増えないのか
選挙のたびに女性議員の数は増えつつあり、男女比率改善に向かう過渡期であると見ることも出来る。
が、思うようには増えていない、というのも事実であろう。
冒頭のひろゆき氏の発言は「女性有権者が女性候補者に投票しない理由」であり、あくまで推測である。
候補者の人柄・信頼性
女性議員が増えない理由としてなるべく事実に基づいた最たる理由として考えられるのはおそらく『候補者の信頼性』で、ポッと出の新人よりも何期も当選している現職議員のほうが選挙区の支持地盤が強く、また投票時に候補者を選ぶ基準として政策面に大きな差がない(認識できない)場合は「現職」であること=信頼性として捉えてしまう傾向があるのではないかと思われる。
現職議員は圧倒的に男性比率が高いため、現職有利=男性有利となる。
この「人柄・信頼性」という基準は投票理由アンケートでも毎回「政策」や「政党」に次ぐ上位に上げられることが多く、投票時の選考理由に大きく関わっていることは間違いない。
ただしこれはあくまで当選回数という履歴を参照した基準に過ぎず、議員の能力を判断したものではないという点で本来は有権者側も注意しなければいけない安易な判断材料であるとも言える。
知名度
候補者の当選の可否を左右する基準としてよく言われるのが「知名度」であり、この点でも基本的に現職議員のほうが有権者が目にする期間は長く有利であると考えられる。
当然現職が有利=男性が有利という図式は同じ。
また現職以外では元アイドル、元アナウンサーなどテレビでの露出が多い候補者が参院選で当選しやすいというのもこの知名度が大きく影響していると思われる。
「テレビで見て昔から知っている(つもり)」「今は結婚して主婦になり地道に頑張っている(らしい)」といったただの印象が前述の人柄・信頼性にもつながってしまうことが考えられるが、これもあくまで能力や実績ではなく表面上知っているというだけの安易な判断材料であるという点には注意が必要である。
新人候補のアピールの場が少ない
仮に「女性が当選しづらい=新人が当選しづらい」と置き換えるなら、選挙期間中のメディアでの取り上げられ方も女性議員が増えない理由に挙げられるかも知れない。
というのも、選挙期間中はメディアで「各党を公平に取り上げるべき」という報道理念(自主規制?)のようなものが働くせいで、候補者一人ひとりにスポットを当てていたのでは時間が足りず、代わりに各政党の党首による政策アピールの場が申し訳程度に設けられるのみとなる。
唯一NHKのみが政見放送の場で候補者一人ひとりに時間を割り当てているが、これもごく限られた時間であり、最近では政策よりもインパクト重視の気持ちの悪い一芸披露の場と化している。
「政策」はアンケートで候補者を選ぶ理由の最上位に挙げられる重要項目であるはずなのに、実際は党の代表意見にすげ替えられ、候補者一人ひとりの特色に目が向けられることはなく選挙期間を終えてしまうことがほとんどである。
結果として「信頼度」「知名度」といった不十分で偏った情報だけで候補者を選んで投票するわけだから新人候補者は不利なままであり、なかなか解決策も見いだせない現状に陥ってしまっているのではないかと思う。
クォーター制に反対なのは自民・維新・NHK党
議員の男女比率を改善するために候補者クォーター制に関する議論も出始めている。
各党の候補者の男女比率を1:1にするという考え方で、「男性への逆差別だ」など賛否があるのは確か。
ただし、あくまで候補者のクォーター制であれば最終的な判断(当選比率)は民意に委ねられるとも取れるので、男女比率改善に向けた取り組みとして筆者は一定の理解をしている。
なお候補者クォーター制に関する各政党へのアンケートでは自民・維新・NHK党が反対の立場を表明している。
概ね「最終的には性別ではなく能力をフェアに見て選ばれるべき」というのが反対理由だが、「男性側(既得権者)の立場が危うくなることを恐れているのでは?」という穿った見方をすれば最大与党である自民党が反対を表明している時点で今後も日本が大きく変わることは無いのだろうと邪推してしまう国民も多いのではないかと思ってしまう。