2024年秋には健康保険証を廃止、その前段として医療機関のマイナ保険証対応が2023年4月から義務化されることが決定した中、この義務化を違憲として提訴した東京保険医協会の副会長がABEMAプライムに出演してマイナ保険証義務化への反対を訴えた。
以下書き起こし。
パソコンを使えない、覚えたくない医師はたくさんいる
吉田章 内科医/東京保険医協会副会長(以下:吉田氏)
「オンライン(保険)資格確認システムの導入により、医療機関が廃業を考えるというのが出てきておりまして、ある団体のアンケートでは10%にのぼっているんですね。
保険資格の確認の(システム導入が出来ない)ためだけに保険医療機関では無くなってしまう。
これは私たち(保険医)にとって生命線を絶たれるようなものです。」
なぜ廃業してしまう?
吉田氏
「インターネットに繋いでパソコンを使う、カードリーダーを使う、そういうものの設備が(操作)出来ないような医院だってあるわけですよ。
そういうものを使えない人だっていっぱいいる。
そういう状況にもかかわらず4月から義務化と言われたら私たち付いて行けないです。という人たちが続出しているわけです。」
裁判してる暇があったらパソコン覚えたら?
吉田氏
「そういうわけにいかない人もいるわけじゃないですか。
実際アンケート結果では10%にのぼっている。」
医師として新しい病気が出てきたら勉強だってするでしょ?
それすら無理なら廃業しても良いのでは?
吉田氏
「そういう考え方もあるかも知れませんね。
でもそう考えない人もいるんじゃないですか?」
インターネット回線とかルーターとかいろいろかかる
費用面ではどのような懸念が?
※国から顔認証付きカードリーダーは3台まで無償提供、診療所の場合は機材導入のために42万9千円を補助することになっている。
吉田氏
「まず大事なのはインターネットに繋ぐ回線ですね。
それとルーターといって回線とPCを繋ぐものがひとつ。
それとPCの端末ですね。
それと後はですね、顔認証カードリーダーってのは無償で提供されますけど、それを繋ぐ手間賃っていうか工賃っていうか。
それと、厚労省が進めているやり方では院内の電子カルテと繋いで運用するということになってますけども、それをやる時の院内施設の改修とかですね。
それらが今の試算では30万~70万って言われてますね。
で(補助として)出るのが42万円なんですけど、それとは別に回線を維持するのに毎月5千円~6千円かかりますよね。
でさらにメンテナンス費用ってのが数千円から数万円。
でさらに出てくるのがセキュリティの問題。
医療機関はサイバー攻撃によく合いますね。
で診療ストップもしてます。
そういうのを避けるためにセキュリティ対策がいると言われています。
それがいくらかかるかはハッキリしない。
ただひとつの試算では、これは病院の場合ですけども22床から300床で約300万かかると言われています。
診療所がいくらかかるかはまだハッキリわかっていません。」
民間の事業者はそれ全部自腹でやってるが?
吉田氏
「私たちはお金のことだけ言ってるわけじゃないんです。」
受付が大混乱しちゃう
ではもっとも懸念していることは?
吉田氏
「いくつかあるんですけども、マイナンバーカードでの受診がはじまると医療の受付の現場が大混乱しちゃいます。」
じゃあずっとマイナ保険証は反対?
吉田氏
「そりゃ将来的にはどうなるかわかりませんよ?
でも急に義務化なんかされて、私たちがどうこうではなくて、患者さんが医療の窓口で、例えばおじいさんおばあさんたちが手続きするっていうのを全員が何かなったら医療がストップしてしまいますよ。」
とにかく変わりたくないってことをおっしゃってるように聞こえるが。
吉田氏
「そういうふうに聞こえるかも知れませんけども、私たち現場を預かっている人間にとって、こんなことが起こったらこんなことがあるって実感があるんですよ。それを、そんなことないでしょって外部の方から言われても困っちゃう。」
じゃあ期間の問題なんですか?
吉田氏
「私たちがここで提訴してるのは、4月から義務化して、それに対応できなければ保険医を取り消すと、お前たち仕事辞めろって言われちゃってるわけ。
それがおかしいってことを言っているんです。」
※以降の詳細なやり取りやニュアンスは是非動画でご覧ください。
▶【マイナ保険証】なぜ医師たちは反対?コスト&負担増で廃業も?東京保険医協会副会長&ひろゆき|アベプラ
思ってもみなかった興味深い反対意見
マイナンバーカードによる保険証利用が義務化されれば、個人の認証、受診履歴、処方履歴などの煩雑な情報が全て一本化され、患者側にとっても医療機関側にとっても不要な手間やコストが省けて良いこと尽くめだと思っていたのだが、そうではない立場からの貴重な反対意見であった。
各家庭で当たり前のように行われているであろう回線の敷設や端末の設置、接続であるが、東京都の医師の何割かにとっては死活問題になるそうである。
もちろんインターネットが無い環境下にある医師たちにとってはマイナンバーカードの利便性を知ることも、セキュリティレベルの高さを知ることも難しいだろう。
結果として、導入すれば現場は大混乱になるという想像に至ってしまうのもある意味当然なのかも知れない。
そして、このようなデジタル化に対応できない医師や医療機関には、今後もじゃぶじゃぶと公金を注いで保護していかなければいけないのである。
もしかしたら、いや既に、このような医師や医療機関を目当てに法外な手間賃をふんだくるインターネットコンサル業なんかも流行るのかもしれない。