マイナンバーカード返納と30年間成長できない現状維持マインド

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#マイナンバーカード返納運動

2023年7月、マイナンバーカードのシステム及び運用を巡るトラブルが相次いだことから「#マイナンバーカード返納運動」をSNSで呼びかける声があがっている。

ことの発端となったトラブルには政府が普及を急ぐマイナンバー制度において半ば強引に保険証機能のマイナンバーカードへの統合及び紙の保険証廃止を決定したことや、マイナンバーへの保健証情報や公金受け取り口座情報の紐づけに間違いがあったこと、住民票の写しを取得する際に他人の住民票が発行されてしまったことなど枚挙にいとまがない。

さらに、これらの相次ぐトラブルに対する政府与党の対応が後手に回り、充分な説明がなされないまま国民の不安を野放しにしてしまっていることが決定打となってしまった感は否めない。

マイナンバーカード返納運動への識者の反応

このマイナンバーカード返納の動きに対し、ITや政治政策に詳しい識者からは

「返納しても意味がない。本人が不便になるだけ。」
「カードを返納してもマイナンバーは消えない。」

と冷ややかな意見が寄せられているが、そもそもの原因となったトラブルが解消されていない現状では騒動が収まる気配はない。

マイナンバーカードの安全性に対する誤解

マイナンバーカードを返納することに意味はあるのか?

これは
「個人情報が詰まったカードを持ち歩くのは恐い。」
というセキュリティ的な意味で言えば全く意味はない。

というのも、マイナンバーカードのICチップにはそもそもカード券面に印字印刷されている氏名や住所などの”見ればわかる”情報以外は入っていない。
すでに大勢が持ち歩いている免許証や保険証、各種ポイントカードなどと大差ないのである。

むしろ、各種関連企業やサービス母体にばら撒いた個人情報をバラバラのカードや証明書の形で持ち歩くほうが管理コストは高く、万が一の紛失時に必要となる対応の煩雑さを考えればマイナンバーカードで一元管理している方が安全だとさえ言える。

誤解を生んだミスリード

ではなぜここまでマイナンバーカードを持ち歩くことに多くの人が不安を覚えるのか。

それはマイナンバー制度の発足時に「マイナンバーは他人に知られないようにしなければいけない」という誤ったアナウンスをしてしまったことと、カード発行時に同時に配られる透明のカード入れに未だにマイナンバーを隠すための帯が印刷されてしまっていることが原因の一端であることは間違いない。

暗証番号なしのマイナンバーを知られただけでは基本的に第三者に情報を吸い出されるようなことはないのだが、デジタル弱者である行政側が”過度に安全性に配慮”した結果”余計に国民の不安を煽る”ことになってしまったというデジタル後進国ゆえの残念なミスリードだったのである。

マイナンバー制度に反対を表明する意味はある

ではマイナンバーカードを返納することになんの意味があるのか?

それはおそらく、マイナンバー制度そのものへの反対を表明することだろう。
マイナンバーカード自体にセキュリティ的な不安は無い。
それでもマイナンバーカードを返納するのだから
「私はマイナンバー制度の恩恵など受けるつもりはない」
という意思表示である。

事実、政府与党は充分な説明もトラブルへの対処も出来ずに支持率急降下とクレーム対応に追われているのだから効果てきめんである。

マイナンバー制度の本当の問題点

マイナンバーカードを巡るトラブルの本当の原因はなんなのか。
誰にでも分かる範囲で簡単に説明するなら以下のようになるだろう。

日本語と戸籍制度

日本人の名前は漢字表記とかな(カナ)表記が可能で、漢字名の読み方には決まりが無いため、読み仮名を併記しない限り本当の読み方は親と本人しか知らない。
さらに、かな(カナ)表記をアルファベット表記にする場合も「つ」をtuと書こうがtsuと書こうが個人の自由である。
そのため漢字で登録された戸籍とカナで登録された銀行口座をデジタル上で紐づけ処理することすら不可能で、バラバラに存在する個人情報をひとつひとつ目で見て本人に確認して修正していくしか無い。
もちろんこの問題は住所の表記に関しても同じである。
これらのアナログで膨大な表記ブレを一斉に統合してデジタル化しようとしているのだから、乗り換え過渡期の今が一番大変な作業であることは間違いない。

ベンダーの技術力不足

マイナンバーカード自体のセキュリティに問題はなくても、マイナンバーでサーバーに格納された個人情報を引き出すシステムには問題がある。
これを作ったのはITベンダーと呼ばれる企業で、各自治体や政府のオーダーを受けて各種関連サービスのシステムを開発し運用している。
が、デジタル後進国である日本が誇る政府お抱えベンダー企業はぶっちゃけ全然優秀じゃない。
だから後進国なのだろう。

政府及びデジタル庁の制度設計と検証不足

そもそもの制度設計と運用思想にも大きな問題がある。
といっても高度な制度設計ができる人材が政府与党やお役所にいるはずは無いので、良し悪しの判断が出来ないお役人が政府お抱えの大企業に大枚はたいてゴミを作らせているという構図であろう。
もしも技術力を見抜けてアウトソーシングのコスト管理ができるお役人が存在したら、あまり耳にすることのないマイナーなベンチャー企業にものすごく優秀なシステムを安く組んでもらってWinWinWinという未来もあったかも知れない。
現状は接待と票集めと天下りと中間マージン搾取が得意な古参大企業と顔も見えない孫請けのタッグで公金をチューチューしているにすぎない。のかも知れない。

成長を妨げる負のマインド

これだけ問題だらけのマイナンバー制度なのだから、不安や不満を訴える人々の気持ちもわからない訳では無い。

が、マイナンバーカードを返納するような人々が声高に叫ぶ
「紙の保険証のままで良い」
「マイナンバー制度は要らない」
という主張は根本的に間違っていると言わざるを得ない。

現状維持は退化と同義

例えば、紙の保険証は保険制度に加入していない人への”保険証のシェア”という犯罪を簡単に可能にしてしまうという側面があるが、「紙で良い」と主張する人はこのような問題は野放しにして良いのか?

例えば、コロナ禍での助成金や給付金の対応を”遅い”と批判した人も多かったと思うが、今後も遅いままで良いのか?

例えば、普段は税金の無駄遣いをやめろとSNSで声高に発信するくせに、管理コスト(=税金の浪費)が高いアナログなシステムは改善しなくて良いのか?

「自分が納得できない変化は受け入れたくないから現状維持で良い」
というのは、進化を諦めた死にゆく思想である。
世界の変革を感じ取れず、女性の社会進出を妨げ、多様性を認められず、経済の発展を否定してきた”駄目な日本”そのものである。

自分に直接関係のない問題に対しては強気の発言を繰り返すわりに、自分の生活にちょっとでも変化を強いられる改善は認めないというのはただの無責任である。

正しい制度設計と正しい運用を訴えるべき

政府与党が抱える問題は大きい。
が、目指すべきは現状維持ではなく利便性と進化である。

であるならば、今訴えるべきはマイナンバー制度の廃止ではなく適正な制度設計と運用である。
既得権益とアナログ老人だらけの自民党に無理なら、選挙で政権をひっくり返してやればいい。
若い政治家と新しい価値観をもった政党に託せば良い。

現状維持は退化。
これだけは絶対に履き違えてはいけない。


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